不動産売却を検討している人の中には「不動産一括査定にはデメリットが多いと聞いた」「どんなシステムかわからないから怖い」という方も多いでしょう。

たしかに、不動産一括査定には気をつけるべきポイントが多く存在します。しかし、メリットもたくさんあるため、不動産一括査定をうまく活用すれば不動産売却の強い味方となるでしょう。

この記事では、不動産一括査定の仕組みやメリット・デメリット、一括査定サイトを選ぶポイントについて解説します。不動産一括査定を利用することに迷っている人は、この記事を読んで参考にしてください。

不動産一括査定とは？

不動産一括査定とは、土地や戸建、マンションなどの不動産を複数の不動産会社へ同時に査定依頼できるシステムです。それぞれの不動産会社に足を運ばなくても、不動産一括査定を利用すれば一度にコンタクトが取れるため、査定依頼の手間を大幅に削減することができます。

また、不動産一括査定は、どの不動産会社に依頼をすれば良いのかわからない方に向いています。同時に複数社とコンタクトが取れるので、その中で自分に合った不動産会社を選べば良いのです。

最近では、多くの一括査定サイトが登場しています。サイトごとに特徴や提携会社、対応エリアが異なるため、自分に適した一括査定サイトを利用しましょう。

不動産一括査定の仕組み

不動産一括査定は、サイトを運営している会社が査定を行うのではなく、一括査定サイトに登録している不動産会社が査定を行います。

不動産一括査定の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 一括査定サイトから査定する物件情報を入力する

  2. お客様情報を入力する

  3. 査定会社を選択して申し込みの完了

上記の手順に沿うだけで複数の不動産会社に査定依頼を出せる点が、不動産一括査定の大きなメリットでしょう。さらに、一括査定サイトは、提携している不動産会社から掲載料や利用料を受け取っているため、査定を依頼する利用者は無料で利用できます。

不動産一括査定の種類

不動産一括査定を利用すると、以下の2種類の査定が受けられます。

  • 机上査定

  • 訪問査定

それぞれの特徴や査定結果が出るまでの期間を解説します。

机上査定

机上査定とは、担当者が現地に訪れることなく、登記簿謄本や図面、周辺相場状況などを参考に不動産価格を算出する査定方法です。「簡易査定」とも呼ばれており、担当者がデータを揃えれば査定が完了するため、1〜3日で査定結果を提示してもらえます。

机上査定の特徴は、担当者が物件を訪問せずとも査定が完了するので、利用者は部屋の中を掃除したり片付けたりしなくても良い点が挙げられます。また、すぐに査定結果を知りたいという方は机上査定が向いています。

ただし、机上査定は不動産会社が実際に現場を見ずに査定を行うため、査定の精度にばらつきが出てしまいます。机上査定で提示された金額と実際の成約価格に乖離が出るケースがあるため、精度の高い査定結果を知りたい人は訪問査定を利用すると良いでしょう。

訪問査定

訪問査定とは、担当者が実際に物件を訪問・調査をした後に査定結果を算出する方法です。現地の状況確認に加え、登記簿謄本や図面、周辺相場の調査を行う必要があるため、査定結果が出るまで5〜10日程度かかります。

訪問査定の特徴は、資料だけでは確認できない物件の状況を現地で詳しく調査するため、成約価格に近い査定結果が得られる点です。また、訪問査定をスムーズに受けるためにも、以下の書類を事前に準備しておくと良いでしょう。

  • 登記簿謄本

  • 権利証

  • 地積測量図

  • 建物図面

  • 公図

  • 身分証明書

訪問査定時に上記の書類があれば、スムーズに査定を受けられます。

不動産一括査定4つのデメリット

不動産一括査定には、大きく4つのデメリットがあります。

  • 提携している不動産会社にしか依頼できない

  • 査定対象外になるエリアがある

  • どの査定結果が正しいのか判断しづらい

  • 複数の不動産会社から営業電話がかかってくることがある

それぞれのデメリットを詳しくみていきましょう。

提携している不動産会社にしか依頼できない

不動産一括査定の1つ目のデメリットは、提携している不動産会社にしか査定依頼を出せないことです。そのため、査定依頼を出したい特定の不動産会社がある場合、その会社が一括査定サイトと提携していなければ査定を依頼できません。

また、中にはどの一括査定サイトとも提携していない不動産会社があります。その不動産会社に査定依頼を出すためには直接コンタクトを取る必要がありますが「不動産一括査定に登録していない＝力のない不動産会社」というわけではありません。一括査定サイトと提携していなくてもホームページやSNSで魅力を感じた場合は、直接査定依頼を出してみることも検討してみてはいかがでしょうか。

査定対象外になるエリアがある

不動産一括査定では、査定対象外になるエリアがあるという点もデメリットです。売却を検討している物件のエリアがサイトの査定対象外である場合、対応できる不動産会社に直接コンタクトを取る必要があるため、複数の会社に効率よく査定依頼を取ることは困難になってしまいます。

査定対象外になるエリアには以下の特徴があります。

  • 人口が少ないエリア

  • 不動産会社が少ないエリア

  • 地価が下がって需要が低いエリア

上記のすべてが査定対象外というわけではありませんが、物件のエリアが上記に当てはまる場合は、できるだけ提携会社数が多くエリアカバー率が高い一括査定サイトを探しましょう。

どの査定結果が正しいのか判断しづらい

不動産一括査定を利用する場合は、どの査定結果が正しいのか判断しにくいという点にも注意が必要です。不動産一括査定では複数の不動産会社から査定結果が届くため、提示された査定額に大きな乖離があった場合、どの査定額が適切なのかがわかりにくいのです。

たとえば、複数社から以下の査定結果が届いたとしましょう。

  • A社：4,000万円

  • B社：7,000万円

  • C社：8,000万円

もし適正価格が5,000万円の場合、A社に依頼すると1,000万円の損が発生してしまい、B社とC社に依頼すると相場より高く売り出すことになるため売れ残る可能性があります。このように、不動産一括査定は効率良く複数社に査定依頼を出せることがメリットですが、依頼者自身がある程度の相場を理解していなければ、適切な査定結果を選びにくくなってしまうでしょう。

複数の不動産会社から営業電話がかかってくることがある

不動産一括査定のデメリット4点目は、査定を依頼すると複数の不動産会社から営業電話がかかってくる可能性があることです。仕事や子育て、家事などで忙しい場合は、不動産会社からの営業電話が煩わしく感じてしまうかもしれません。

営業電話の対応が苦手な人は、申し込みの際に電話ではなくメールでの対応を希望しましょう。あらかじめメールでの対応を希望しておけば、営業電話の対応に追われることが少なくなります。

不動産一括査定で気をつけるべき3つのポイント

不動産一括査定で満足のいく不動産売却を実現するためには、以下の3つのポイントに注意しましょう。

  • 高い査定額をそのまま鵜呑みにしない

  • 不動産会社には得意・不得意分野がある

  • 依頼前に自身でも情報を集めておく

それぞれのポイントを詳しく解説します。

高い査定額を鵜呑みにしない

不動産一括査定では、高い査定額を出す不動産会社の販売力が高いとは限りません。そのため、不動産会社が高い査定額を提示してきても、そのまま鵜呑みにしないことがポイントです。

高い査定額を提示する理由として、1社のみと媒介契約を結ぶ「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」の締結を目的としているケースがあります。依頼者の気を引くために高い査定金額を提示して、専任、または専属専任媒介契約を締結しようとするのです。

不動産は、相場より高い金額で売りに出すと売れ残る可能性があります。高い査定金額を鵜呑みにしないためには「査定価格＝成約価格」ではないことを理解し、高い金額を提示する不動産会社よりも、価格の根拠をしっかり示してくれる不動産会社を選ぶことが重要です。

不動産会社には得意・不得意分野がある

不動産一括査定を利用するにあたり、不動産会社にも得意・不得意分野があることを知っておかなければなりません。

たとえば、地域密着型の不動産会社の場合は、特定のエリアの土地や戸建の販売には強い傾向がありますが、都市部の投資用物件の情報をあまり持っていないことがあります。一方、投資用区分マンションや1棟マンションを多く取り扱う会社では、住宅地にある土地や戸建のノウハウが少ないケースがあるのです。

不動産会社の得意・不得意を知るためには、以下を確認しましょう。

  • 担当者から過去の成約実績を聞き取る

  • 不動産会社のホームページでメインに掲載している物件を調べる

上記を確認すれば、不動産会社がどの分野に強いのかを知ることができるでしょう。

依頼前に自身でも情報を集めておく

不動産一括査定を申し込む前に、自分で物件の周辺相場を調べることも重要です。不動産一括査定は複数の不動産会社から査定結果が届くため、どの査定額が適切なのかを自身で判断する必要があるのです。

自分で不動産相場を調べるためには、主に以下の3つのサイトをチェックしましょう。

  • 不動産情報ライブラリ

  • レインズ・マーケット・インフォメーション

  • ポータルサイトや不動産会社のホームページ

「不動産情報ライブラリ」と「レインズ・マーケット・インフォメーション」では、エリアを選択して条件を絞り込めば、その地域の成約事例を調べられます。また、ポータルサイトや不動産会社のホームページを見れば、現在売り出されている物件がわかるので、大体の相場が確認できるでしょう。

「不動産会社に丸投げした結果、売却に失敗した」という事態を防ぐためにも、自分でも最大限の事前準備を行うことが重要です。

不動産一括査定サイトの選び方

インターネット上には多くの一括査定サイトがあり、どれが自分に合っているのかわからなくなることもあるでしょう。

  • 対応エリア内か

  • 提携会社数・同時依頼社数が多いか

  • 査定可能な不動産種別か

上記のポイントを押さえれば、自分に合った一括査定サイトを見つけられます。ここでは、一括査定サイトの選び方を詳しく解説します。

対応エリア内か

選び方の1つ目は、物件が対応エリア内にあるのかという点です。首都圏や大阪、名古屋、福岡などの主要都市では、ほとんどの一括査定サイトが利用できますが、地方の場合はサービス対象外のケースがあります。

査定依頼を行う物件が地方にある場合は、まず対応エリアを確認し、その中から適切な一括査定サイトを選びましょう。

提携会社数・同時依頼社数が多いか

自分に合った一括査定サイトを見つけるためには、提携している不動産会社の数や、同時依頼社数もチェックしましょう。提携している不動産会社数が多いほど対応エリアが広く、たくさんの査定結果を聞くことができるため、より確実な査定結果を知ることができるのです。

また、1度に多くの査定を依頼したい人は、同時依頼社数の多いサイトが向いています。一般的には4〜10社に同時依頼ができるため、提携会社数やエリアに応じて一括査定サイトを選ぶと良いでしょう。

査定可能な不動産種別か

一括査定サイトは、扱う不動産の種類に差があるため、査定依頼を出したい物件の種類に対応しているのかどうかを確認しましょう。

戸建や土地、分譲マンションなどはほとんどのサイトが対応していますが、以下の種類はサイトによって対応していないことがあります。

  • 投資用区分マンション

  • 1棟マンション・アパート

  • 店舗ビル

  • 倉庫・工場

  • 農地・山林

もし住宅やマンションではなく特殊な不動産を査定したい場合は、対応種類の確認を忘れずに行いましょう。

不動産一括査定のメリット5選

不動産一括査定には多くのデメリットや気をつけるポイントがありますが、それ以上に素晴らしいメリットが存在します。

  • 複数の不動産会社にまとめて依頼でき手間が省ける

  • 無料でインターネットから査定依頼できる

  • それぞれの査定内容を比較検討できる

  • 不動産の特徴に合った会社を見極められる

  • 不動産会社の対応の質を比較できる

ここからは、それぞれのメリットを詳しく解説します。

複数の不動産会社にまとめて依頼でき、手間が省ける

不動産一括査定のメリット1つ目は、手間をかけずに複数の不動産会社へ査定依頼ができる点です。従来の不動産売却は、1社ごとに査定依頼の連絡をする必要がありましたが、一括査定サイトが登場したことで、その手間を省けるようになりました。

不動産会社に連絡するのは何となく勇気がいるものですが、不動産一括査定を利用すれば気軽に申し込める点もメリットです。不動産一括査定は、手間を省いてできるだけ多くの不動産会社にコンタクトを取りたい方おすすめです。

無料でインターネットから査定依頼できる

インターネットを利用して無料で査定依頼ができる点も、不動産一括査定のメリットです。一括査定サイトには、提携している不動産会社が利用料金を支払っているため、依頼者は無料で利用することができます。

また、インターネット上で申し込めるため、遠方に住んでいる人でもエリアに精通している不動産会社に査定依頼ができます。さらに、24時間いつでも申し込めるので、仕事や家事など多忙な人にも嬉しいサービスです。

ただし、無事成約までたどり着いた場合は、所定の手数料を不動産会社に支払わなければいけません。仲介手数料や各種サービスに費用がかかる場合があるため、心配な人は成約後の費用を事前に確認しておきましょう。

それぞれの査定内容を比較検討できる

不動産一括査定のメリット3つ目は、複数の不動産会社から届いた査定結果を比較検討できることです。不動産会社は独自の査定方法で価格を算出しているため、査定結果に違いが生まれます。それぞれの査定結果を比較することで、より信頼できる不動産会社を見つけられるでしょう。

また、不動産会社によって独自のサービスを提供している場合があります。

  • ハウスクリーニング

  • リフォーム会社紹介

  • 動画を撮影した販売活動

  • 買い替えのためのライフプラン相談

中には、抱えている悩みを解決してくれる不動産会社があるかもしれません。不動産一括査定を不動産会社の比較検討に利用してみてはいかがでしょうか。

不動産の特徴に合った会社を見極められる

不動産一括査定を利用すれば、その不動産会社の特徴や強みを知ることができます。査定書には近隣の類似事例や参考相場が記載されており、実績が多い会社とそうでない会社に質の違いが現れるのです。

一例として、戸建の査定依頼では以下のような違いが出ることがあります。

  • A社：近隣の類似事例が10件、現在売り出されている物件が5件を根拠とした査定結果

  • B社：近隣の類似事例が5件、現在売り出されている物件が2件を根拠とした査定結果

この2社を比較すると、多くの根拠を示したA社のほうが信憑性が高いことがわかります。ただし、B社はマンションの査定依頼には強い可能性があり、マンションではB社が有利になるかもしれません。

このように、不動産会社には得意・不得意分野があります。それがどの分野なのかを知るために不動産一括査定が役に立つため、物件に適した不動産会社が見つかるよううまく活用してみましょう。

不動産会社の対応の質を比較できる

不動産一括査定を利用する5つ目のメリットは、不動産会社の質を比較検討できる点です。1社のみに査定依頼をした場合、その不動産会社の対応が良いのか悪いのかの判断がつきません。その点、不動産一括査定を利用すれば複数の不動産会社とコンタクトが取れるため、自分の基準に合った会社を選定できるのです。

不動産会社を選ぶ基準には以下が挙げられます。

  • 物件の周辺エリアに精通しているか

  • 熱心に動いてくれるか

  • 言葉遣いや態度は丁寧か

  • 不動産知識が豊富か

不動産という重要な資産の売却を任せることになるので、不動産一括査定を利用して不動産会社の質を十分に見極めることが重要です。

まとめ

この記事では、不動産一括査定の仕組みやメリット・デメリット、一括査定サイトの選び方について解説しました。不動産一括査定には、提携している不動産会社にしか頼めないという点や、査定結果の選定が難しいなどのデメリットがあります。一方、効率よく複数の不動産会社に査定依頼ができることや、査定内容や不動産会社の質を比較検討できる点がメリットとして挙げられます。

不動産一括査定は、売却を依頼したい会社にこだわりがないという人や、できるだけ多くの会社から査定結果を聞きたいという人に向いています。不動産を少しでも高く、スピーディーに売却するためにも、不動産一括査定を活用してみてはいかがでしょうか。