「2020年問題」という言葉をニュースなどで聞いたことがあるかもしれません。東京オリンピックが終わった後に不動産価格は暴落する…。でも本当にそのようなことは起こるのでしょうか?
不動産価格は東京オリンピック後も「下がらない」という専門家の指摘もあります。東京オリンピック後に不動産価格は下がるのか、上がるのか、そもそも不動産の価値が変動するのは東京オリンピック後なのかそれ以前なのか。今回は2020年問題の真相について掘り下げて解説していきます。
東京オリンピック後の不動産価格
東京オリンピック後に不動産価格は本当に下がるのでしょうか。オリンピック後の不動産価格の下落要因、上昇要因をそれぞれご紹介します。
下落要因
東京オリンピック開催が決定してから、中国などの富裕層が湾岸エリアなどを中心にマンションを購入し、都内のマンション相場が値上がりしていきました。このような海外投資家が東京オリンピック前後に一斉に売却をした場合、不動産価格の下落要因となり得ます。
ただし、この売却は東京オリンピック前に起こり始めるのではないか?ともいわれています。2013年に東京オリンピック開催が決定したタイミングで不動産を購入し、長期譲渡の税率を使用するため税金対策として5年間は保有しようと考えていた投資家は、2018年頃から売却の動きをするようになっている可能性があります。
【東京オリンピック後の不動産の下落要因】
- 東京オリンピック開催決定後に購入した富裕層による都心マンションの売却
上昇要因
東京オリンピック後の不動産価格の上昇要因は、インフラ整備や再開発が挙げられます。インフラ整備や再開発により不動産価値が上昇すると考えられる地域もあり、再開発により街が整備され、商業施設やオフィスなどが充実した場合、その後の不動産価格は上がる可能性があります。過去のオリンピックを振り返ってみると、開催国はその後も観光客数が増加し、商業施設やホテルなどの開発により土地価格も上昇しています。
【東京オリンピック後の不動産価格の上昇要因】
- 再開発やインフラ整備
- 開催後の観光客数の増加
つまり、東京オリンピック後に不動産価格が下落する要因もありますが、一方では上昇する要因もあり、一概に東京オリンピックが終わったら不動産価格が暴落するとは言い切れません。また、不動産の価格はオリンピックの前か後かという「時期」だけではなく、「地域」によっても異なり、オリンピックにより上昇が見込める地域もあります。
不動産価格下落への疑問視
さらに、そのほかの視点から東京オリンピック後に不動産価格が下落するという説に対し、疑問を呈する声もあります。2012年に行われたロンドンオリンピック後の不動産価格の変動を振り返ったデータによると、ロンドンオリンピック前と後で比較してもオリンピックが不動産価格に与えた影響は「なかった」と報告しています。
また、現在東京の不動産価格はオリンピックに向けて少しずつ上昇しています。不動産価値が上がっている要因がすべてオリンピックであれば、確かにオリンピックが終わった後に不動産価格が下がるというのは理にかなっています。しかし今現在、不動産価格が上がっているのは一概にオリンピック効果によるものだけではありません。この値上がりの背景には、低金利の金融政策なども絡み合っています(金利が下がると不動産価格は上がるため)。
さらにオリンピックで恩恵を受けるのは、海外観光客の増加にともなう商業地域や首都圏でのことで、地方にはほとんど影響がないという声もあります。
- 2012年ロンドンオリンピックにおいては不動産価格に影響なし
- 現在の値上がりはオリンピック効果だけではない
- 地方ではほとんど影響がない可能性あり
オリンピック開催と金利の関係
東京オリンピック開催は金利にも影響を与える可能性があり、オリンピック開催により金利は若干「上がるのでは?」といわれています。金利が上がると不動産価格は下がるため、オリンピック開催により金利が上がり、間接的に不動産価格が下がる可能性もあります。
オリンピック開催前に不動産価格は下落する?
また、不動産価格が下がるのはオリンピック開催前ではないか?ともいわれています。海外投資家が、東京オリンピック後に不動産価格が下落する前に、売り抜ける可能性があるからです。オリンピックによる不動産価格の下落は前倒しで起こる可能性があります。
東京オリンピックと近い時期で不動産価格に影響を与えるイベント
不動産価格に影響を与えるのは、東京オリンピックだけではありません。東京オリンピック前後には、不動産価格に大きな影響を与えそうなイベントがほかにも多くあります。
消費税の増税
東京オリンピックの前には「消費税の増税」があります。前回の8%への増税の際には、増税前の駆け込み需要があり、1割近く不動産価格が上昇しました。しかし増税後は駆け込み需要の反動により販売戸数、契約率も大幅に悪化しました。
生産緑地
東京オリンピック後の2022年には、生産緑地制度の延長期限が期限切れとなり、生産緑地にこぞって住宅が建設されるのではないかとも騒がれています。需要と供給のバランスが崩れ、不動産価格が大幅に下落するのではないかともささやかれています。
東京オリンピック前には増税、後には生産緑地制度の期限切れと、不動産の価格に直接的に大きな影響を与えそうな要因は、オリンピック以外にも多くあります。
不動産の購入・売却は東京オリンピックの前?後?
では不動産を実際に購入・売却するのはオリンピックの前がよいのでしょうか?それともオリンピック後がよいのでしょうか?
購入
購入については、今不動産価格は全体的にやや上がっている状態ですので、今後「下がる」という可能性も考えなければなりません。もし、ローンを組まずにキャッシュでの購入を考えているなら、オリンピック終了後、不動産価格が下がりきってからの購入、つまり「待ち」が一つの手段として考えられます。
開催後まで待つ場合、不動産価格が全体的に下がる可能性はありますが、消費税増税や金利上昇のリスクもあります。ローンを組んで購入する場合は、金利についても考えなければなりません。購入者側にとってみれば不動産価格が多少下がっても税金や金利が高ければあまりメリットはありません。また、購入を遅らせることはローンの完済年齢もそれだけ上がってしまうということになります。
売却
2020年の東京オリンピック前に海外投資家が売りに出るとすると、2019~2020年が売り時ということになります。さらにオリンピック後の2022年には生産緑地制度の期限も迫っていますし、長期的に見ても人口減少は目に見えています。売却時期を遅らせることによるメリットはあまり考えられません。
もちろん、これも地域によります。オリンピックにともなってインフラや商業施設の整備が進む地域であれば、オリンピック後でも価格が上がる可能性はあります。
まとめ
海外投資家が売りに出ることにより、オリンピック後ではなく前に不動産価格は下落し始める可能性もあります。しかし、不動産の価格を左右する要因はオリンピックだけではありません。地域差がありますし、消費税の増税や生産緑地制度、金利上昇など、さまざまな出来事が不動産価格に影響を与えます。
不動産の購入や売却を考えている方は、東京オリンピックは確かに大きなイベントですが、それだけに左右されず、そのほかの要素も総合して時期を検討するのがよいでしょう。